ハッシュハッシュ・イレイザー
終章 白いバラを捧げる意味

「今回も上手く行ったわね、ハイド。マリアとの久しぶりの逢瀬はどうだった?」

 月夜の晩、私は淡々と訊いた。

「何もかも見て知ってるくせに、ナナは意地悪だな。そして、その目顔でしれっと訊かれるのは辛い」

「別に意地悪してるわけじゃないわ。言ったでしょ、私はただ傍観してるだけ、そこになんの感情も込めないの。ただの挨拶程度にしか過ぎない」

「そうだな。ナナに何も期待しても仕方がない。俺に気がないナナだから、君とこうやって一緒にいられる」

「そうね。一番愛するマリアは、あなたとは長く一緒に居られない。真理はいつもあなた以外の誰かを好きにならないといけない。そして私は全く関係のない空気みたいな存在」

「上手く機能してるもんだ」

 ハイドは笑うも、目に悲しさが込められていた。

「でもマリアに会えてよかったじゃない。例えそれが一瞬のことであっても」

「その一瞬もいつまで続くのか、わかったものじゃないが、これで最後になるかもしれない」

「まだわからないわよ」
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