ハッシュハッシュ・イレイザー
第三章 何も恐れずに解放されるとき

 遠足が終わった後、クラスの様子が違ったように見えたのは、紫絵里の自信からくる思い込みのせいだろうか。

 その遠足の翌日の事、クラスの女子の噂を紫絵里が耳にしてから、紫絵里は特に変化の違いを感じていた。

 紫絵里が耳に入れたというより、瑠依とは全く関係のないクラスの女子が直接紫絵里に近づいて話を持ちかけた事がきっかけだった。

「ねぇ、瀬良さん、ちょっといい?」

 普段は話すこともないが、瑠依の取り巻きよりはまだ臨機応変に言葉を交わせるグループに所属している小泉ミナミが、朝教室に入ってくると、好奇心丸出しに紫絵里の袖を引っ張って廊下に連れ出した。

 紫絵里は戸惑うも、強く断りきれずになすがままに連れられていく。

 真理もその後を静かに追った。

「ちょっとどうしたの?」

 紫絵里が訝しげな顔をしているのも気にせず、小泉ミナミは辺りを確かめてて小声気味に話し出した。

「あのさ、耳にしたんだけどさ、瀬良さんは松永君と付き合ってるんだって?」

 突然の事に紫絵里はびっくりしたが、前日の流れからすでに自分もそうなると確信していたので、返事が曖昧になってしまった。
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