榛色の瞳を追って
「オ姉サン、日本語トテモ上手デス。 イツカラ日本イルノデスカ?」

「生まれも育ちも日本ですよ」

たどたどしい言葉は陳さんに似た所もあるなぁと、私は思いました。 父は15歳年上の兄が生まれる数年前に日本に来ているので、もう30年以上は日本にいます。 この方は日本に来たばかりなのでしょう。

「Oh, ナルホド。 僕ハ前ノ夏ニ来マシタ」

「前の夏…去年の夏? それじゃあ、まだ半年と少しくらいですね。 短い間でここまで話せるなんて凄いですね」

話も合いますし、ご自分も疲れているでしょうに、丘を登って息が切れている私に「大丈夫デスカ?」と、優しく気を遣ってくれるのです。 こういう方を英国紳士というのでしょうか…。

まだ英国人と決まった訳ではありませんので、もしかしたら和蘭(オランダ)紳士かもしれませんし独逸紳士かもしれませんが。

「こちらが南山手教会ですよ」

「Thank you...イエ、アリガトウゴザイマシタ」

英語が出て、慌てて言い換える姿が可愛らしく見えます。 男前なのに不思議ですね。

「私、英語は女学校で少し習ったので簡単なものなら解るんですよ」。
そう言いたかったのですが、言う前にその人は教会の中に入っていきました。

「…あっ!」

お名前、まだお聞きしていない…。
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