白くなったキャンバスに再び思い出が描かれるように
 「ハハハ、彼女だったらそんくらいかかかるだろう」

 沙織は湯船にある湯をすくい体にかけた

 「熱い」と言いながら

 「それにね。お母さんがあなたも早く入っておいでって」

 「まいったな」

 「いいじゃない私たちは親公認以上なんだから」

 そう言って湯船につかる僕にキスをした。

 そして濡れたた沙織の体が、ゆっくりと湯船に落ちていく。

 僕は沙織を後ろから抱く様に一緒に湯船の中で湯に浸かった。

 「なぁ、沙織」「うん。なあに達哉」

 「もうすぐクリスマスだろ。沙織プレゼント何がいい」

 僕は沙織にほしいものを訊いてみた。


 うーんと考えていたが。ぼっそりと「赤ちゃん」と答えた。


 「ええ、まだ早いよ。それに……」「それに」と沙織は返したが。

 「でも駄目よね。赤ちゃんがいたら、私その子の事解らなくなりそうだから。自分が生んだのに、どこの子なんて言いそうだから」「そうか」

 「でもね、そうなれば達哉の事は覚えていられるかもしれないね」

 「どうかな」「どうして」

 「俺の子だろ。お前はその子と俺を一つに想うだろうからな。別々じゃなく一つに。そうなれば、俺らお前の一番大切な思い出になっちまう。二人ともお前からは消えちゃうだろうからな」

 二人の間に少しの時間が流れる。そして

 「そうかもね」と言って後ろを向いて微笑んだ。

 「おれ、上がるね」うん。と少し寂しげに返事をする。

 風呂から上がり居間に行くと佑太が、キッチンのテーブルで夕飯をがついでいた。

 「あれ、もう上がってきたのか達哉さん。もっとゆっくり入ってりゃいいのによ。姉貴とよ」そんな佑太に僕はぼっそりと

 「佑太、彼女との電話今日は短いじゃないか」と負けじと返してやった。

 佑太はみるみる顔を赤くして、そんなんじゃねぇよ。と言って、急いでご飯を駆け込みニタニタしながら2階の自分の部屋に戻っていった。

 「あの子ったら」と言って、僕に「飲むでしょ」とお母さんがビールを出したが

 「沙織と一緒に」と言った。

 「そう」と言いながらも「今日は私も混ぜてね」と、にこっとして僕に言った。

 「あーいいお風呂だった。お母さんビールビール」とすぐに冷蔵庫に向かうと

 「どこがいいでしょうね。こんな叔父さんみたいな子の」と呆れるようにお母さんは、自分の娘に言い放つ。
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