白くなったキャンバスに再び思い出が描かれるように

 優子は声を詰まらせながら泣いていた。

 「え、」その最優秀賞と言う言葉がもう一度こだまする。あなたのと言う言葉と共に。

 優子は、声を詰まらせながら、まるで自分の様に歓喜際立っていた。そして心から

 「おめでとう」とその彼女の一言で弾かれたように


 僕は光り輝くイルミネーションのもと

 「やったぁ」と叫んだ。大きく、周りにいる人なんか関係なく自分の、自分の為に叫んだ「やったぁ」と
 後で聞いたのだが同じ文芸部で出稿したものが全て選考落ちであったことを。 

 僕は沙織に伝えた。僕の書いた。二人で描いた。あの小説が最優秀賞になったと。

 僕ら二人で描いた思い出が……最優秀賞になったと。

 沙織は泣きながら、声を詰まらせ、声にならない声で


 「おめでとう。達哉」と言ってくれた。まるで自分の事の様に。そう僕ら二人で一つの小説なんだから。
 「最高の思い出をもらった」と沙織が言ってくれた。

 そして


 キャンバスに、大きな思い出が描かれた。大きな大きな思い出がそのキャンバスに描かれた……  
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