白くなったキャンバスに再び思い出が描かれるように
 沙織は「もうナッキったら」と呆れた様にして、もうすでにここに用意してある下着と着替えをナッキのもとへ届けた。
 「ナッキ、下着新しいのないからとりあえず私の使って。それと替えの洋服も置いとくから」と言って浴室から出てきた。浴室からは何も気にしない声で「サンキュー」とナッキの声が聞こえた

 そして沙織は僕を見て


 「わ、私、達哉の事、そ、そんなに縛ってないから」


 と言ったが、あっけにとられていた僕は返事をするのを忘れていた。

 その後シャワーを浴び終えたナッキは沙織にさんざん怒られたのは言うまでもなかった。

 そんな事もありながら、8月の熱い、いや暑い日々をバイトと二人で描く小説に明け暮れた。


 沙織が泊まりの日、ぼっそり「子供作ろっか」と耳打ちしたのはジェラシーからだったのか……


 9月に入り、ナッキの個人戦が始まった。僕らも応援に駆け付け、意外なほど真剣なナッキを目にしたとき、彼女の今までと違った雰囲気を見た。

 その時「男に良く好(も)てるのも解るが気がする」と沙織に言うと。「多分、女にも好(も)ててるんじゃない」と皮肉っていた。

 あの競技に向かうナッキの姿を、あんなことを言いながら潤んだ目で見ていた沙織の気持ちも解らない訳じゃなかった。

 大会も終わり、それなりの成績を残したナッキもようやくひと段落を付けていた。

 そんな中、沙織とナッキ、そして愛奈ちゃんの3人が僕のアパートへ押しかけて来た。

 「どうしたの、3人そろって」

  3人部屋に入るや否や、沙織はエアコンを全開にして、ナッキは電気を付けて窓の二重カーテンを閉め切った。そして沙織が「達哉スマホ」と手を伸ばし、渡すと電源をすぐに切った。

 そして、おもむろにナッキが上着を脱ぎだしブラ一つになって

 「ごねん暑いし、しわになるから。沙織には許可もらってるし、私は気にしないから」とぶっきらぼうに言い沙織は「この際そんな事もういいから」と沙織もえらく興奮している様だった。

 そしてこの2人とは逆に愛奈ちゃんは静かに下を俯いて座っていた。

 「ちょっとみんな、どうしたって言うんだ」

 僕が3人に訊くとナッキが

 「どうしたって。どうもこうもないわよ、これは一大事よ」

 続いて沙織が

 「私、宮村さんがあんな人だとは思ってもいなかった」
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