甘言師、臥雲旦陽の甘い毒

 「…終わりの幕引きが出来るなんて、あなたは幸福だ」

 天上に向けられていた視線が静かに臥雲へ移ったのを見た。

 「なに?」

 「…あなたは奥様に夫としての威厳をみせたのでしょう。とても良いことだ。ああ、あなたがうらやましい…」

 静かな低音は、口を隠していることもあり感情がまるで読み取れない。

 ただ、国府谷には、床に舞う冷気のように静かで冷たく感じられた。

 「…うらやましい…だと…?罪に潰されそうになりながら、逃げ惑う俺が…?」

 「それでも事実はかわらないじゃないですか…奥様はもうこの世にいない…その事実は」

 「私を責めているのか」

 「ええ」

 突然の話の展開に若干の焦りを感じた。

 依頼人を責めているかとの質問に頷き肯定した?

 ここはとりあえず機嫌を取るべきではないのか。

 朽ちだすべきか悩んだが、指の隙間の瞳が酷く真剣に思え思いとどまった。

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