雪の降る日に、願いを消して
倒れる
『ごめんね』


桜子が言ったその言葉の意味が空中に浮いていた。


何に対しての謝罪なのだろうか。


駿を独り占めしてごめん?


隠し事をしてごめん?


その両方だろうか。


「意味わかんねぇな」


聡樹がイライラしたように頭をかいた。


3人で教室へ戻っている途中だった。


「ほんと、駿って一体何者なの?」


紗英は駿という人間そのものがわからなくなってきているようだ。


あたしも例外ではない。


駿は他人の空似だと言った。


それにしては驚いた様子が少しもないのだ。


自分にそっくりな人間がいると知れば、もう少し反応があってもいいのに。


「でも、これ以上聞いても駿は何も教えてくれないだろうな」


聡樹がそう呟いた。


あたしも同感だった。
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