雪の降る日に、願いを消して
約束
ショウに言われたからというわけじゃないけれど、あたしは屋上へ来ていた。


紗英の来る場所と言えばここか、もしくは中庭くらいなものだ。


屋上へと続く白いドアを開けると、冷たい空気が肌を刺激した。


さっきベランダにいた時よりも気温が低くなっているのがわかる。


空は黒い雲で覆われていて、今にも雨が降り出してきそうだ。


軽く身震いをしてベンチへと視線を移動させる。


そこには紗英が1人で座っていた。


ここからじゃその表情は見えないけれど、ジッと押し黙ったまま動かない。


「紗英?」


あたしは一歩近づいてそう声をかけた。


紗英は弾かれたように体をビクンッと跳ねさせて振り向いた。


目が合った瞬間、言葉を失う。


紗英の目は赤く充血していたのだ。


いままで泣いていたということが嫌でもわかった。


紗英は頬に伝う涙を慌ててぬぐい「鈴、どうしたの?」と、首を傾げて聞いて来た。


なんでもないようにふるまう紗英に、胸が痛んだ。


「……紗英を迎えにきたの」
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