雪の降る日に、願いを消して
踏み入れられない場所
ショウから聞く事ができたのはそのくらいだった。


体の弱い駿のために、ショウが登校してきている。


そしてあたしが好きになったのはショウの方で、告白をして断られたのもショウの方。


外は真っ暗になっていたが眠ることができず、あたしはベッドの中で何度も寝返りをうった。


ショウがあたしと付き合わないのは駿との約束があったからだ。


でも、もしそれがなかったら?


あたしはショウの彼女になれたのだろうか?


そんな考えが浮かんでは消えて行く。


もし、ショウと普通に出会う事ができていれば、あたしたちの関係は変わっていたんじゃないか?


そう思うと悔しくて下唇をかみしめた。


ショウは自分の人生を捨ててしまっている。


駿が大学へ進学すれば、また同じように駿のフリをして講義を受けるのだろう。


そして会社へ入社しても、駿の代わりにショウが仕事をするのだ。


ショウと言う人間は完全にこの世から消え去っている。


どうしてそんな事が現実として起こっているのか、理解の範疇を超えている。


それとも、あたしたちの知らない何かがまだあるのかもしれない。


あたしは悶々と悩み、結局朝まで眠ることができなかったのだった。
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