雪の降る日に、願いを消して
紗英のお母さんは甘い卵焼きを作る。


「ありがとう……で、いいのかな?」


「人に好かれるのはいい事でしょ?」


「そう……だね?」


だけど聡樹の気持ちに沿う事はできない。


そんなあたしに『おめでとう』と言う言葉に合わないのではないかと思う。


「聡樹は頑張ったんだね。その勇気は鈴も認めてるんでしょ?」


「うん……」


頷き、自分と聡樹を重ね合わせる。


あたしと聡樹は本当によく似た立場なんだと思う。


「そういえばこの前ね、近所の中学生の子がさぁ」


突然始まった近所の子の話にあたしは目を見開いて紗英を見た。


紗英はまだ真剣な表情をしている。


「好きじゃない男の子に告白されてね、一応付き合う事にしたんだって。付き合ってみれば相手の事を好きになるかもしれなし、なにか変化があるかもしれないからって」


「え?」


あたしは紗英を見つめる。


紗英もあたしを見つめている。


「まぁ、それは人それぞれに考えた結果であって、鈴もそうしろだなんて言わないけれど。あぁ、そんな考え方もできるんだなぁって思って。ただそれだけ」


そう言い、紗英はあたしから視線を外して残りのおにぎりを食べはじめた。


好きじゃないけど、一応付き合う事にした。


品定め。


だろうか?


それでダメなら付き合いを解消するんだろうか?


あたしにはよくわからなくて、甘い卵焼きを口に含んだのだった。
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