雪の降る日に、願いを消して
「ねぇトラ、あたし告白しちゃった」


トラの背中を撫でながらそう言う。


「そしたら駿ってば『ありがとう』だって。なんなのよ、その中途半端な返事」


そう言う自分の声が震えている事に気が付いていた。


目の前がジワリと歪んで、涙が出ていることがわかった。


涙が一粒トラの背中に落ちて、驚いたトラが目を開けてこちらを見ている。


涙が出始めたら止まらない。


「何よ『ありがとう』って。付き合えないなら付き合えないって、そう言えばいいじゃん!」


怒鳴るようにそう言うと、トラがあたしの膝から飛びのいた。


リビングの隅まで逃げて、こちらの様子を伺っている。


「自分が悪者になるのが嫌なのかな? 桜子がいるって、あたしだって知ってる。それなのに、誤魔化すなんて……!」


サイテー!


その言葉は飲み込んだ。
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