フォーチュン
アンジェリークの失踪を公にし、くまなく操作網を張れば、逆にアンジェリークはすぐに見つかるだろう。
しかしそうすれば、アンジェリークが失踪をしたという事実が明るみに出る。
しかも、小国の皇女ひとりを探し出すために、世界で一番繁栄している大国自ら動けば、おのずと事は大きくなる。

失踪をした皇女を娶るため、という理由でも、捉えようによっては反発を買うだろう。
そして失踪をしたアンジェリーク本人は、皇女という立場を貶(おとし)められ、威信を傷つけられる可能性もある。
そのような者たちに対して、ドラークの力でねじ伏せることもできるが、それでは根本的な解決には至らない。
そうすることで穏やかに保たれている世界の調和が乱れ、逆に争いへと発展する可能性もあるのだ。

ユーリスの愛という私欲が、世界に争いごとを引き起こす可能性を秘めているのは、世界で一番繁栄しているドラーク王国は、世界に影響を及ぼしているからだ。
ゆえにドラーク王国の次期国王という立場でも、世界に影響を及ぼす可能性がある、ということなのだ。

「アンジェリーク皇女の捜索は、このまま秘密裏に行う。皆も他言をしてはならぬぞ」と言い渡したマクシミリアン国王に、皆「はっ」と賛同をすると頭を下げた。
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