フォーチュン
その夜、ドラーク王国王宮内にある薄暗い一室で、占術師(せんじゅつし)・愚者(フール)は、ひとりで占術をしていた。

白く長い蝋燭の灯りが愚者の周辺をぼうっと浮き上がらせる中、愚者はタロットと呼ばれるカードをシャッフルし、小さな木のテーブルにそっと1枚、また1枚・・・計2枚のカードを置いた。

1枚目は「1・魔術師(ザ・マジシャン)」の逆位置、2枚目は「15・悪魔(ザ・デビル)」の正位置だった。

「・・・錯覚、嘘、目くらまし。魔術は時に人を騙す。欲に囚われた男たち。赤い髪の天使を罠に陥れた・・・悪魔」

「アンジェリーク様・・・」と愚者が憂いた声でつぶやいたとき、窓を閉めきった風すら吹かない室内の空気が動き、蝋燭の灯りがフッと消えた。
そんな中、愚者はまた、一枚のカードを引いた。

「あなたはまだ、己に犠牲を強いるのでございますか」

愚者は「12・吊るされた男(ザ・ハングドマン)」の正位置カードに向かって、そうつぶやいた。
< 192 / 318 >

この作品をシェア

pagetop