フォーチュン
マダム・ルッソに倣った者、そして正面に立つ男が、この国の王子であると認識した娼婦たちは、慌てながら次々と頭を下げた。
だが、アンジェリークは頭を下げることを忘れ、ただユーリスを見ていた。

・・・黒い詰襟の上着と黒いズボン。
上着の肩から腕についている金色のラインは、ドラーク王国の国王になる王家の御方だけが着ることを許される正装着。

ということは、今ここに立っていらっしゃる御方は、ドラーク王国のユーリス王子に間違いない。

あぁ、ここで皇女時代に身につけた雑学が役に立つなんて!
でもあの髪、そして青灰色の瞳と眼鏡は・・・。

「コンラッ・・ド?」
「ルーシー!何ボーっと突っ立ってるんだい!」
「あっ、すみませ・・・」

運悪く、隣にいたマダム・ルッソにどやされたアンジェリークは、マダム・ルッソの手で強引に頭を下げさせられた。

そのとき、ユーリスの眉間に深い皺が寄ったのを、頭を下げている娼婦たちは知らない。
しかし、後ろに控え立っている護衛の4名は、「やばい」と思わずにはいられなかった。
< 248 / 318 >

この作品をシェア

pagetop