アイ・ラブ・ユーの先で


あの怒涛の花火大会のあと、浴衣も化粧もなにもかもボロボロのまま結桜の自宅へ着替えに戻ったわたしに、彼女は小動物のようなかわいい目をシロクロさせていた。

いったいなにがあったの、佐久間先輩はどうしたの、誰かに襲われてしまったの、とほとんど泣きながら雪崩みたいに問われて、嘘をつくこともできず、ぜんぶを白状したのは仕方がない。

それに、結桜の家までバイクで送ってくれたのも、そのあと自宅まで乗せてくれたのも、水崎先輩だったし……。



「ねえ佳月、それはホントに急展開すぎてしんどいよ」


ただ当日は時間もあまりなく、結桜の家族もいたので、詳しい話は学校で会ったときに、と持ち越したのだった。

その次にやってきた月曜の昼休みというのが、まさにいまである。


「いやいや、わたしのことより、結桜と奥先輩のほうは……」

「もー! いまはそれどころじゃなーい!」


一口サイズのサンドイッチを両手に持ちながら、小さな体をおもいきり左右に揺らして抗議する。

そのしぐさがあまりに愛らしくて、奥先輩と本当にうまくいってほしいなあ、なんて心の底から自分のことなど棚上げしてしまう。


「え、だって佳月、水崎先輩とつきあうことになったんだよね?」


改めてそんなふうに言われると、そこまでぴんとこないのも本当だ。

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