アイ・ラブ・ユーの先で


“三者面談のお知らせ”


角ばったゴシック体でデカデカとそう書かれたわら半紙をテーブルの上に出すなり、お母さんが盛大なため息をついた。


「ああ、そうね、佳月にとっても大事な面談なのよね」


たぶんこれは、いつもの大きすぎるひとりごとだな。

だからヨロシクとだけ伝えて部屋に戻ろうとすると、意外にも呼び止められた。


「ああ、佳月、待って」

「え、なに?」

「あのねえ、志月と侑月も、同じ時期に三者面談があるの。だから佳月のは、ふたりの面談の日程が決まってから提出するようにしても大丈夫? ほら、志月は今年、大学受験があるでしょ。侑月だって、小学校から中学校に上がって、すごく重要なタイミングだと思うし……」


ああ、そういうこと。

佳月にとって()大事な面談、という言葉。それは、お兄ちゃんや侑月にとってはもっと大事な面談、という真意がこめられていたわけだ。


わかったあ、と間延びした声を出した。


「佳月も高校に入学してはじめての面談だもんね。ちゃんと、わかってるからね」


とってつけたような言い訳を、聞き流すべきか、受け止めるべきか、いつも迷うから、そういうことは言わないでいいのに。

あいまいに笑って自室へ引き返すと、なぜか3つ年下の妹が、わたしのベッドの上で堂々と寝っ転がっていた。

< 37 / 325 >

この作品をシェア

pagetop