漂う嫌悪、彷徨う感情。

「『過去を水に流して』ってよく聞くけど、どんな傾斜の滝から、どんな水勢のダムから放り投げれば流れるんでしょうね、過去って。 流れるのは時間だけで、過去はその場に留まって、未来にまで漂い続けるものなのかもしれませんね。 『時間が解決する』ってヤツも、当事者たちが解決に向けて最大限努力した場合にのみ適応されるって事なんでしょうね。 だって、美紗ちゃんと真琴はこの10年、会わずにいたからその過去に触れなくて良かっただけで、過去自体は何も解決せずに、現在を脅かしている。 過去って、忘れる事も出来るけど、思い出す事も出来てしまうから厄介ですよね。 事実は消えないし消せない。 だから真琴は『謝罪した』という事実を過去に置いてこなければいけなかった。 でも、それをしなかった。 難儀な過去に巻き込まれましたね、オレら」

和馬がしょっぱい笑顔を作りながらオレに同意を求めた。

和馬の言っている事は理解出来る。 だけど、
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