漂う嫌悪、彷徨う感情。


---------岡本たちに連れられ、会社から少し離れた居酒屋へ。

適当な席に座り、誰かが適当に頼んだであろうビールを適当に飲み、運ばれてきたつまみを適当に口に放り込む。

みんなとワイワイ酒を飲みたいとか、愚痴りたいとかいう気持ちは全くなく、ただ酒の力を借りて今の辛い気持ちを一瞬で良いから忘れたかった。

「元気出してくださいよ。 もう、美紗の事なんか忘れてしまいましょう」

オレの隣に座った小田さんが、オレが飲み干したビールグラスを下げ、新たに頼んだビールをオレに手渡した。

そんな風に言われると、余計に忘れられない。

頭を過る、美紗と和馬が腕を組みながら歩く後ろ姿。

それを掻き消す様に、受け取ったビールに口を付け、勢いよく流し込む。

美紗は今頃和馬と何をしているのだろう。

オレは今、楽しくもない酒を飲みながら何がしたいのだろう。
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