恋の歌が響くとき
 
何も大丈夫なんかじゃないのに、強い力で掴まれた腕を振り払うことも出来ず、空にされるがまま抱き締められる。


今から私を振ろうって考えてるくせに、どうして抱き締めたりするんだ。


「空、いいから。返事なんてしなくていいから。とにかくもう離して」
「零、俺はーー」


そこで空が何かを言いかけたとき、不意にガチャリと音楽室の扉が開けられた。


「お疲れサマー!うわー涼しい。ねえ誰かい、る?」


そこから現れたのは私たちのバンドでドラムを叩く那奈だった。タイミングが悪過ぎる。


泣きじゃくる私にそれを抱き締める空。こんな修羅場じゃ何の言いわけも出来ない。ていうか別に言い訳なんてすることはないんだけども。


「なに、どうしたの2人とも」
「……悪い那奈。ちょっと立て込んでるから、」
「大丈夫、もう、終わったから」


那奈のおかげで緩んだ腕からするりと抜け出し、顔を下げたまま二の句を継いだ。


「ごめん、顔洗ってくるね」
「零!」


呼ばれた名前に振り返ることなく、そこを後にした。


もう、本っ当最悪……。


こうなるはずじゃなかったのに。聞きたくない答えから結局逃げ出してしまった。ごめんね、空。



こんな臆病な私を許してほしい。














終わりの始まり
(大丈夫、私はダイジョウブ)


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