素直の向こうがわ
泣く資格なんてないのにさっきから涙が止まらない。
怖くて怖くて仕方ない。
どうして? どうして殴ったりなんかするのよ。
私みたいな女のために殴ったりしないでよ。
もし河野が何か処分でもされたら……。
考えれば考えるほど悪いことばかりが想像される。
何度も手を握り締めてもその震えを抑えられない。
河野。
河野――。
どれだけ待ったのだろう。
「松本?」
扉が静かに開けられた瞬間、あの声が私の耳に届いた。