雨のち虹 ~カタツムリの恋~
てんし【依子】
【依子】
新しいバイト先は車の部品を売る店。
働いているのも、店に来るのもおじさんばかりだった。
黄色い看板とお揃いの黄色い制服で、私は『女』であることを捨てて、働こうと思った。
もう、バイトを辞めたくない。
女であることを売りにしたくない。
誰かともめたり、誰かに嫉妬されたり、裏切られたり・・・
そんなのもう嫌だ。
深い関係なんていらない。
浅く、薄い関係でいい。
ただのバイトの高校生。
ちょっと生意気だけど、何でも嫌がらずにする一人のバイト。
店の中はいつも油の匂いがしていた。
ガソリンスタンドが大嫌いだった私が、こんな匂いの店で働くなんてね。
ばかだね。
会えるはずないんだよ。
お父さんに
会えること期待してる自分がばっかみたい。
『依ちゃん・・・ガソリンスタンドに入るから鼻押さえとけよ!』
『依ちゃん、車のオイル買いに行くけど、一緒に行く?』
ガソリンの匂いが苦手だった私をいつも心配してくれたお父さん。
お父さんは車いじりが好きだったっけ・・・