偽王子と嘘少女
「そうやって、よく人のことを棚に上げて言えるよな。柊だって、十分に可愛い格好しているくせに…」
「…えっ」
彼はポツリと声に出した。
もしかしたら、独り言のつもりだったのかもしれない。
でも、私の耳にはっきりと届いてしまった。
聞き間違いなんかじゃなく、『可愛い』と。
しばらく藤堂くんを見ていると、私の視線に気づいたようで、さっきのことを弁解する。
「ち、違う…! 今のはだな、その…なんて言うか、えっと…あっと…」
「ぷっ…なにそれ」
全然伝わってないし。