偽王子と嘘少女
「紫水くん、希子!」
手を振って、走って駆け寄るけど、そんな私の声に2人は耳も傾けない。
ちょっと、無視なんてひどくない?
そう言おうとして、体が固まったように動かなくなる。
かすかに聞こえた希子の言葉。
「…私と、付き合ってくれませんか?」
いつもとは違う、震えた声。
告白…。
本気なんだ。
私はそれを見たくなくて、後ろに振り返って逃げようとする。
だけど、すぐ後ろに来ていた藤堂くんにぶつかってしまう。