意地悪な片思い

 長嶋さんと同い年だってのに全然違うなあ。
長嶋さんのほうが大人っていうか、落ち着いてるっていうか…。

「どうした?」

「いえ、長嶋さんと同じ年に見えないなぁって。」

「…そう?」
 速水さんの眉が一瞬ぴくっと動く。

「長嶋のほうが魅力的?」

「魅力的って―――…
そうじゃないですけど、やっぱり長嶋さんのほうが…」


落ち着いているっていうか安心感があるっていうか。

やっぱりどんなに会話が盛り上がっても、
速水さんは遠い世界の人のようなそんな気がする。

それは年齢のせいなのか彼の人気のせいなのか、何の違いなのか分からないけれど。


「……速水さんは変な人ですね。」

「え?
それってどういう……」


コンコン
会議室のドアがノックされた。

「失礼します。
速水さんちょっといいですか?」
 木野さんが顔をひょこりと小さくのぞかせた。

「あ…うん。」
 速水さんがコップをそのままにして、その場に立ち上がる。

まるで、まだ話したいって言ってるみたい。

そう思いながらもその彼のコップを持つと、私は自分のも持ってドアに向かった。

「もう終わったのでここどうぞ。」

「いや、市田ちょっと…。」

「長嶋さんに頼まれた仕事思い出したので。
コーヒー片しときますね。」
 木野さんに会釈すると、私は速水さんを見ずに会議室を出た。

半分以上残っていた彼のコーヒーを水面台に流した。

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