意地悪な片思い
しかし閉じることなく、そのまま私はそのページを見入った。
電気をつけてないってのに暗順応のおかげか、文字がかすかに見えるんだ。
ページのタイトルは、
『ランジェリーマジック!?下着の色で気持ちを後押し!』
途中やめにしていた雑誌だから、そのページを見るのは初めてだった。
なんとも女の子が好きそうな可愛いページだ。黒、青、緑、白、いろんな色がそれぞれに枠をつくって並んでる。占いが絡んでるってのも、興味がそそられる点だろうな。
どういう時にその色の下着を身に着けるのがオススメなのか、示されているんだ。
私が持っている下着の色が全部そこに載っているみたいに、色の紹介も豊富。
星座とか血液型とか生年月日とかを使ってする占いはありがちだけど、下着の色で占いなんて私初めて知ったよ。
私、今何色の下着つけてたっけ。
試しに当たっているのか調べてみようかと、服をたくし上げようとする。
まぁ、こんなの気休めか…。
確認するまでもないと服を掴んだ手をすぐに下した。
代わりといっては何だけど、桃色の欄だけちょっと見ておこうかな。
一番持ってる色で、つい買ってしまいがちだからさ。
えっと…何々?
成熟した女性、優しい人、笑顔の素敵な女性などになりたいという願望を持つときに選びたくなる色。つけてる自分だけじゃなくて、接した相手にもしあわせオーラをわけてあげられるハッピーカラー…か。
なるほどね。女性的な色、ってことか。
ん、まだ書いてあるな。
もう一つの意は――――
パタンと私はそこで雑誌を閉じた。
雑誌をテーブルの上において、お風呂場に移動する。
洗面台に栓をして水をためると、少量洗剤を入れて押し洗いをした。それが終わると終わっていた洗濯物を籠にいれ、代わりに洗ったトップスを投げ込み、脱水ボタンを押す。
騒がしい音を立てながら再び洗濯機が稼働し始めた。1分足らずで終わる脱水、私はその間洗面台で手を洗う。
ランジェリーマジックか。
見ていた雑誌のタイトルを思い起こす、きゅっと水を止めた。
私は服をたくし上げて、洗面台の鏡で下着の色を確認する。すぐに服を元通りにおろした。
こいつのせい、だったのかな……ううん、違うね。
せいじゃなくて、桃色のおかげだったんだろうね。
その人に、彼に、速水さんに好きって言えれたのは。