クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
でも、その前に--


クシュンッ……


鼻がムズムズして、私のくしゃみが出るのが先だった。

とっさに顔をそむけたし、手で鼻を押さえたから、セーフだと思うけど……。

はぁ、ムードが台無し……。




間の悪さを呪い、恥ずかしくなってうつむいていると、小野原さんにぎゅっと抱きしめられた。

呆れられてると思ってたから……心の準備が出来てなかった……!

「えと、あの……」

「香奈が寒そうだから、温めてる。薄着だし、さっきまで風の当たる所にいたからな」

「……」

服越しだけど、コートを脱いでいるせいか、外の時より、小野原さんの体温を近くに感じる。

……きっと、心臓の音も、聞かれてる……。

だけど、それでもいい。ずっとこうしていたい……。




「……じゃあ、今夜はずっと温めて下さい……」




無意識に出た言葉だった。

それに気付いて、顔から火が出そうなくらい、熱くなる。

「あの……っ、私、何言って……」

慌てて離れようとしたけど--遅かった。

ぐいと腕を引かれ、背中に柔らかい衝撃が当たり、天井が視界に入った。

「え……?」

ソファーに押し倒され、呆然とする私に、小野原さんの体がのしかかってきた。

「……あのっ」

「限界だ」

端正な顔が近付いてくる。

え、ええ……っ!?

「二人だけの時に、惚れた女にそう言われて、それでも俺は冷静を保てるような男じゃないぞ」

言い終わると同時に、唇をふさがれた。


ちょっと強引に--でも、優しく……。


……そうだ。何も迷うことはない。

自分の意志で、こんな時間に小野原さんの家に来たんだから……。

私は小野原さんの首に手を回した。

「……っ」

その途端、小野原さんのキスが一気に深くなる。

キスだけなのに……体の芯が熱い。

この人の熱が、もっと欲しい。



……こんなにも、あなたのことが好きだから……。



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