クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
立派な玄関のインターホンを鳴らすと、カチャッ、とドアが開いた。

いよいよ対面--!

緊張で心臓が飛び出そう。


すると、そこに現れた顔を見て、私は思いっきりポカーンと口を開けた。

「さ、笹倉さん!?」

「お二人ともいらっしゃい、待ってたわよ」

そこにはよく知った女性--笹倉さんが立っていた。

「え、ええ!?」

訳が分からず、圭一さんと笹倉さんの顔を交互に見る。

「まあ、とりあえず、中に入って」

笹倉さんがなぜか杉本邸に私達を招き入れる。

「どういうことですか!?何で、笹倉さんが……」

「香奈、笹倉さんが杉本部長の奥さんだよ」

「え、ええっ!?だって、名字が……」

「ああ、笹倉は私の旧姓なの。今は杉本よ。職場では旧姓の方が都合がいいから、そのままで通してるの」

「そう……だってんですか……圭一さん、何で教えてくれなかったんですか?」

「ごめん、香奈を驚かせたくて」

圭一さんがフッと笑った。

笹倉さん、結婚前に営業部にいたって言ってたから、営業事務かと思ってたけど、営業マンだったんだ……。

「……何だ……笹倉さんで安心しました。奥様がかつての『鬼の女上司』って聞いてたから、どんな怖い人かと……」

そこまで言って、私は口を押さえた。

しまった……余計なこと言っちゃった……!

笹倉さんを見たけど、別に怒った感じは受けない。

「あら、やだ、そんな昔のこと……」

笹倉さんは、圭一さんに微笑んだ。

「何で教えちゃったのかしらね、小野原くん……?」

あ……『くん』付けだ……きっと昔はそう呼ばれてたんだろうな……。

……ヒッ……!よく見たら、笹倉さんの口は微笑んでるけど……目が……目が笑ってない……!

……確か、前に業務部の飲み会に行った時、笹倉さんが同僚を叱り付けてたのを聞いたことあったな……。
あれは、私のためにわざとあんな感じを出してくれたんだと思ったけど……案外、あれは笹倉さんの素だったのかも……絶対そうだ……。

私はチラリと圭一さんを見た。

黙ったままゆっくり視線を泳がせる、珍しい圭一さんを見た気がした……。


人は見かけによらない。


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