クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
外は、さっきまでの晴天が嘘のように、西からの厚い雲が空全体を覆っていて、小雨が降り出していた。太陽の光も雨雲に遮られ、いつものこの時間帯よりも、周囲はやや暗く見える。

……まるで、今の私の心のよう。

このまま、家に帰されることも覚悟していると、車は五分ほど走った先の、浜辺沿いの駐車場に入った。

夏真っ盛りなら、海水浴客などでいっぱいになっているはずの駐車場も、季節外れなのと、この天候のため、車の数は数えるほどしかない。

車は、誰も利用していない一番端で、停まった。

……どうしたんだろう……。

私は目を横に向けたが、小野原さんは前を見ていて、無言のままだ。

私も、目を伏せる。

……呆れられたんだ……。

小野原さんは、私への不満をどう伝えようか、考えてるのかもしれない。

でも、私が悪いんだから、文句は言えない。

暗い顔してて、つまらなそうに思われてしまったのもあるかもしれないけど、それ以前に――



……小野原さんと来てるのに、私は昔の恋人のことを考えていた……。




こんな私に……この人のそばにいる資格はない。



どうせ終わってしまう関係なら、何も始まってなくて良かったのかもしれない。

こんなの、これが初めてじゃないし……もう慣れっこだ。

そう思った時。

「香奈」

小野原さんが、静かに言った。

「……はい」

「俺は、香奈の笑った顔が好きだ」

「……え?」

思いがけない言葉に顔を上げると、小野原さんと視線が合った。

「でも、無理して笑うのは見たくない」

「……」

……作り笑い、見破られてたんだ……。

「だから、何かあったら言ってくれ」

小野原さんが私の顔をのぞき込むように言った。

その目がとても優しくて。

反面、急に自分が許せなくなった。



「私、やっぱり小野原さんとお付き合い出来ません……!」



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