クール上司の甘すぎ捕獲宣言!
あまりに強く引かれたので、小野原さんの方に上体が倒れ込みそうになり、彼の腕が背中に回された。

そして――

押し付けるように、唇を奪われた。

以前のような、優しく触れるだけのキスとは明らかに違う。

「!!」

何……?何が起こったの……!?

私はパニックになりながらも、小野原さんから離れようと、ドンドンと彼の肩や胸を叩いた。

でも、びくともしない。

「……は…………」

私は、「離して」と言おうとして、口を少し開けた瞬間――

小野原さんの舌が私の口の中に入ってきた。

「ん……んっ!」

びっくりして、さらに小野原さんの胸を強く押し返したけど、ムダだった。

腕を掴んでいた手は、いつの間に私の後頭部をがっしりと押さえ付けていて、身動きが取れない。

何で……こんなことを……!?

小野原さんが、私の舌を捕らえようと深く侵入してくる。

逃れても逃れても、結局は絡み取られてしまう。

その繰り返しの行為に――

私の頭は次第に真っ白になっていった。

……何なの……こんな感覚、初めて……。何も考えられない……。

抵抗していた腕からは力が抜け、代わりに小野原さんの服をぎゅっと掴む。

「あ……ふぁ……」

口の隙間から、吐息が漏れる。

いつの間にか、私は小野原さんのキスを受け入れ、彼の唇と舌の動きに自分のそれを合わせていた……。

雨音とは別の水音と、切ないような吐息が、かすかに車の中に響く。




どれくらいそうしていたか分からない。

やがて、小野原さんが唇を離した。

「……ふ……ぅ……」

私は全身から力が抜け、そのまま彼の肩にもたれかかった。



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