婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
「え、えええっ……!」


予想外……とは言えないほど、鬱陶しがられてるのは自覚しているけれど、つれない。
つれなすぎて、いっそ清々しさすら感じてしまう。


とは言え、朝食は一日の元気の源。
本当に抜く派と言うのなら、将来何千人って社員を率いる次期社長としても、その生活スタイルは変えるべきだと思う。


私はカウンターを回り込み、ドアが閉まる寸前で樹さんの腕を取って止めた。


「ちょ、待ってください! 朝ごはんは大事です! もう出来てますから、ちゃんと……」


両手で縋りつく私に、樹さんは不機嫌そうに眉を寄せた。


「うるせーな。家事は別々って言ったろうが」

「う、でも、一人分も二人分も変わらないので、朝ごはんくらい……」

「朝食べると胃もたれするんだよ。遠慮なく二人分食って、大事なとこにもっと肉つけろ」

「っ……!」


着替えるから出てけ、と、ピシャリと一言お見舞いされて、私は肩を押されながら部屋を出た。
バッタン!と大きな音を立てて、私の鼻先でドアが無情に閉められた。
思わず一歩後ずさりながら、私はがっくりとこうべを垂れた。


「……過去になく酷い」


頭を下げたままの視界に、ご指摘通り扁平な胸元が飛び込んでくる。
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