ひと月の妹
早乙女佳澄(side)
白ユリ
「紫藤司」
名前さえも美しいあの人の婚約者に
「紫藤佳澄」
そうよ、もうすぐ、この名前になるのよ!
だけど、司さんの漆黒の瞳
『漆黒と真紅』
みかんさんは紙の上で妹になった。
たとえひと時でも・・・
「紫藤みかん」
紙の上での妹
それさえも悔しかったわ
彼女は佐々木財閥の御曹司
佐々木圭さんと結婚した人じゃない
彼と結婚するために格式のある家柄が必要だっただけ
彼女は宣言通り、ひと月と少しの日々の後で
佐々木圭さんと結婚し、フランスへ行ってしまった。
だけど美しすぎる。今は佐々木みかんになった彼女
司さんがみかんさんを嫌って、あんな風に頬を
打ったのに、なぜ、あのように立っていられたのかしら?
司さんの顔をみようともしないで静かに痛みに
耐えていて、自分なら言い訳や泣くだろうし