恋愛の始め方
あっという間に時間は過ぎ、今日を最後に、あたしは今の病院を去る。

また、戻って来ることも出来る。

だけど、その選択肢はあたしにはない。

終止符を打ったのに、あたしは未だに間宮の姿を探してしまう自分が居る。

だから、同じところに居ちゃいけない気がする。

この気持ちを諦める為にも、忘れる為にも。


「心ここに在らずだな」


申し送りし、シフト終え、帰宅準備をしているあたしに、直哉がそんな言葉を口にする。


「どういう意味」

「いや」


何よ、自分で言っておきながら!


「俺も今上がりで、これからお袋の所に寄って行くがつもりだが、志乃も来るか?」


別に、これから予定があるわけでもない。

だから、あたしは頷いた。

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