どん底女と救世主。


「…勝」


反射的に振り返ると、そこには肩で息をしている勝の姿があった。


「なんで…ここに?」


どうして、勝がこんなところにいるの?
なんとなく一歩後ろに下がってしまう。

もしかして私を追いかけてきた?
そんなわけ、ないよね…?


「話があるんだ」


勝が真っ直ぐな瞳でじっと見つめてそう言った。
真剣に言っている、というのは分かる。

だけど、


「ごめん、私はないから。帰るね。電車来ちゃう」


今更改まってするような話なんてない。

帰ろうと、振り返って歩き出した瞬間、

「待ってて」


手首を掴まれて、引き止められる。


「ちょっと離してよ。電車乗り遅れるから」


一体なんのつもりなの?

思いっきり手を振り解こうとするけど、勝の力が強くて全然離れられない。


「もう、いい加減にしてよ!」


頭に血が上って、声の大きさなんてもう考えられなかった。

どうしたら離してくれるのかと思案していたとき、勝から発せられたのは信じられない言葉だった。



「咲、やり直さないか?」


< 215 / 260 >

この作品をシェア

pagetop