どん底女と救世主。



「冴島。お前、男見る目ないんだな」


隣に座る主任が日本酒の入ったお猪口を傾けながら言う。


私の話を聞いた第一声がそれか。


ため息を飲み込みつつ、おでんのタコをつまむ。


男を見る目がない、なんて自覚は全くない。
むしろ昔から人を見る目は確かな方だと思ってさえいた。


いや、信頼していた勝にも希ちゃんにも裏切られた今、主任にそんなことを言ったら鼻で笑われそうだな。

黙っておこう。


「私に男を見る目がないのは認めますけど、私後輩いじめなんて本当にしてないんです。
なのに、こんなことで左遷なんて…」


改めて思う。
こんなのってない。ひど過ぎる。

なんとかこの窮地から脱したい。


「深山主任、私どうしたらいいんでしょうか…」


もうどうしようもなくなって、藁にも縋る思いで目の前に座る彼に助けを求める。


それなのに、


「課長だ」


間髪開けずに、隣から鋭い声が聞こえて来た。

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