どん底女と救世主。



「面倒くさいな…」


もう全てが面倒くさい。何も考えたくない。

アルコールでぼんやりと頭が回らない私にはもう、目の前に居るのが上司だとか、しかもあの深山課長だとか関係なくなってしまった。


とにかく眠くて、机に突っ伏する。

前から聞こえる、「おい、」という困った声も聞こえない。

というか、聞きたくない。


けれど、


「俺のとこ来るか? 」



という、私の人生で一番濃い一週間の中でも群を抜く衝撃的な一言が耳を貫いた。


がばっ、と音がするくらいの勢いで机から顔を上げたもんだから頭が痛い。がんがんする。

でも、そんな痛みよりも今は。


「ご冗談を」

「割と本気だけど」




本気、って…。
課長の家で課長と一緒に暮らすってこと?

いやいやいや。

何言ってるの、この人。もう、ただでさえ頭回らないのに…!


いつの間にか頼んでいたらしい焼酎を涼しい顔で啜る課長の考えてることが本当に分からない。


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