とある国のおとぎ話




 それを振り払おうとしたけど、そんなことは出来ず、彼女を追いかけた。


 彼女は順当に、いや、目覚ましいスピードで上へと進んだ。


 血を滲むような努力をし、煮え湯を飲むような思いをして。


 そんな生活の中でも、彼女は純粋さを失わなかった。


 潔癖であり続けた。


 でも、その一方で。


 昔のように、笑ってくれなくなった。


 あの頃だって、心から笑えるような環境じゃなかった。


 でも、不安を取り除くために微笑む姿が俺の救いで。


 それが、今は。


 何か、いつも引っ掛かりがあるように、移ろうような笑い方をするようになったのだ。


 目に見える不安から、得体の知れない不安を抱えるようになってしまった。


 それでも、彼女は清くあり続ける。


 聖女のように。


 決して、何ものにも染まらないでいる。


 その潔癖さに誰もがついて行けるわけではない。


 彼女は、その潔癖さ故に、汚職を徹底的に公表し、ダーティーワークも拒んだ。


 称賛の声などあるはずもなく、恨みだけが彼女に付きまとう。



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