年下男子とリビドーと

春から新しく入ったメンバーの歓迎会が催されることになった。
もちろん成海くんもメンバーに含まれている。

わたしは若干身構えつつも、その日を迎えた。
遅番組は9時半頃に合流しての遅い飲み会。
センターの終業が遅いため、飲み会自体が珍しい。


わたしは成海くんに隣を陣取られないように、細心の注意を払っていたつもりだったが、彼の方が素早かった。
わたしは何故この子に懐かれてしまったのだろう?
考えていると、前の席に座った一番仲の良い派遣の鹿島(かしま)さんがフォローしてくれた。

「成海くん、残念ながら冴木ちゃんには長い彼氏が」
「何が残念なの」

残念のくだりは余計だったが、やはり周囲にも彼がわたしを特別視していると映っているようだ。
そりゃあわたしだって、薄々そうかなとは思ってたけど……
こんな若い男の子が、わざわざ30前の女狙う理由がわからない。

「……人間、いつ何が起こるかわからないじゃないですか?」

成海くんは運ばれてきた突き出しを手に取りながら、余裕を感じさせる涼しい表情で答えた。
否定しないので、驚いた。
鹿島さんは強気に出た成海くんに、感心している。

「うわー、こんなこと言われたなんて、彼氏に報告出来ないね」
「飲み会のこと、彼に話して無いもん」

鹿島さんは完全に面白がっている。
すると成海くんが、にやりと笑みを浮かべながら口にした。

< 11 / 73 >

この作品をシェア

pagetop