年下男子とリビドーと
翌日は、昼からの出社とは言え、体が辛かった。
何とか出勤し、シフトを確認すると、夜から何故か成海くんとふたりでファイリングに当たっている。
正直、勘弁して欲しいと思った。
「昨日、大丈夫でしたか?」
ファイリングの為、後ろのテーブルに移動すると、成海くんもやって来て声を掛けられた。
少し心臓が脈打つ。
「おかげさまで。迷惑かけてごめんね」
「迷惑なんて、思いませんよ」
成海くんは、前を向いたまま、少し照れたように口にする。
沈黙が訪れた。
仕事中なのだから、沈黙しても当然なのだが、何だか気まずい。
何か話題を、と考え始め、はたと我に返る。
わたしは何故、この子との話題を探しているのか? と疑問を感じたが、そんな理性は無視した。
「……美大の子って、もっとそういう関係のところでバイトしてるものかと思った」
「此処お金良いんで。俺奨学金あるから、なるべく稼いどきたいんです」
意外な答えが返って来た。
「そっか、美大ってお金掛かるんだよね。今から返済のこと考えてるなんて、偉いね」
「そうですか? いずれ返さないといけないものだし」
やっぱり、しっかりした子だ。
最初の印象は間違ってなかった。
真面目でしっかりしている成海くん。
強引で浮ついている成海くん。
どっちも本当のあなたなのかな。
「……あれ?」
わたしは手に取った書類に違和感を持った。