願うは君が幸せなこと

「つまりこうだ。『中学生、高校生が理解出来るような資料を作れ』」

今この場所に創くんを連れてこなかったことをとても後悔した。
一緒にこの人の、月宮さんの話をリアルに聞いて欲しかった。
だけど仕方ない。こんなに真剣に相談に乗ってくれるなんて思っていなかったのだ。

「難しい言葉ばっかり並べられたら、その意味を聞くのも面倒になってくる。その上、こんな言葉もわからないのかと馬鹿にされてるような気分になってくる。で、終了」

コクコクと頷いて月宮さんの意見に同意する。

感動してしまった。
私達が躓いている原因を指摘してくれて、漠然と感じていたもやもやを具現化してくれた。

この人一体、何者なのだろうか。

「これが俺の意見。ま、今のをどう受け止めるかはお前次第だ。全部忘れてくれてもいい」

「あ、ありがとう……」

なんだかすごく胸がいっぱいだ。
月宮さんと出会えてよかったとさえ思った。
だけどそれと同時に、疑問が湧いてくる。

「ねえ、」

「あ?」

「そんなに才能があるのに、なんで営業部にいないの?」

そう尋ねると、月宮さんは少しの間口を開かなかった。
ああ、これはきっと教えてくれないなとなんとなく思った時、眉間にしわを寄せた月宮さんがこう言った。

「その質問に答える必要はないな」

やっぱり、と思ってから、少し月宮さんのことを理解してきたのかなと喜びそうになった。
そしたら、これは喜ぶべきことなのかわからなくなって、混乱しそうになって頭をブンブンと左右に振った。

そんな私を見た月宮さんが、目を細めて可笑しそうに笑った。
それを見て、またちょっとだけ混乱しそうになったのは、どうしてだろう。

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