もしもの恋となのにの恋

「・・・もしもし?」
少し、声が震えた。
それがなんだか恥ずかしくて私は意味もなく咳払いをしていた。
電話越しからの返答は遅かった。
「・・・よお」
無愛想・・・。
その一言に尽きる返答だ。
私は『うん』と返事をし、未だにズクズクと痛む左側後頭部を少し強く抑え付けた。
今夜は頭痛が酷い・・・。
少し吐き気もしている・・・。
こんなこと、滅多にないのに・・・だ。
「・・・少し、いいか?」
電話越しの秋人の声はいつもよりだいぶ低かった。
何かを考えている時、秋人は声が低くなる。
恐らくその事を本人は知らない・・・。
「・・・いいよ。・・・何?」
私はベッドの中で身構えた。
もう、逃げられない・・・。
誰かが頭の中で囁いた。
それはまるで悪魔の囁きのようだった・・・。
ドクン、ドクンと心臓が脈打つ。
それと同時に左側後頭部も痛みを増す。
嗚呼、痛い・・・。
けれど、どこが痛いのかはよくわからない・・・。
今夜は重症だ・・・。
「・・・・・だろ?」
秋人が電話越しで何かを言った。
けれど、それは私の耳には届かなかった。
「・・・ごめん。・・・何?・・・聞こえない」
ボーッとする。
その頭にまた秋人の声が響く。
けれど、その声は響くだけでその言葉の意味を私は理解することができなかった。
電話越しで秋人が何かを叫ぶように言っている・・・。
それでも私の耳には届かない・・・。
ツーと何か生暖かいものが頬を伝った・・・。
そんな気がした・・・。
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