名のない足跡

「…ウェルス、国…第二…王子…?」


このときのあたしは、本当に頭が回らなくて。


ただ、言われた言葉を繰り返すことしか出来なかった。



でも、これだけはわかった。


あたしの知っているライトなんて、彼の…ほんの小さな一部にしかすぎなかったんだ。



たったそれだけのことが、何よりも受け入れ難かった。



「少し、昔話をしましょうか」



あたしの知っていたライトの微笑みは、今はもう、どこにもない。


口元や、顔は笑っているのに。


…瞳だけは、冷たかった。


「ウェルス国では、国王ウィリーと一人の女性との間で、一人の男の子が生まれました。その五年後、もう一人の男の子が生まれました。…二人はそれぞれ、キラ、ライトと名付けられました」


淡々と話し始めたライトの言葉に、あたしは少し反応した。


…キラ?


「けれど、二人が生まれたことは、世間に公表されることはなく、二人の兄弟は、日の光を見れないまま、育てられました。…その二年後、母親は父と子二人を置いて、行方をくらませました」




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