名のない足跡

紅茶をカップに注ぐメノウを横目で見ながら、カーネは小さく呟く。


「…何がいけなかったと思う」


メノウの手が、ピクリと反応したのを見て、カーネは続けた。


「何故、このような事態になってしまったと思う」


「…知らん。あの頃の私たちには、未来を予測することなど出来はしなかったのだから」


「例え予測出来ても…きっとこうなる事は避けられなかったかもしれないな」


自嘲気味に言うカーネの目の前に、メノウは煎れたばかりの紅茶を差し出す。


カーネは直ぐにカップに手を伸ばした。


「全く…あの二人には、どれだけ振り回されたことか」


「まぁ、そう言うな。今となってはいい思い出だ」


メノウもまた、紅茶を少しずつ口にする。


カーネはその言葉を聞き、ピクリと眉を動かした。


「いい思い出?半分は確かにいい思い出だが、もう半分は消し去りたいほどの苦い思い出だ」


嫌悪感が滲み出ているその表情を見て、メノウは苦笑した。




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