遠まわりの糸
それからのふたり
あれから2年。


俺たちは、27歳になった。


今日はクリスマスイブで、街中がまぶしい。


葵は小学校の先生を続けている。


亮太は、気を遣ったのかたまたまなのかわかんないけど、今年度から市内の別の小学校へ異動になった。


奏は、札幌で役職につき、しばらくは戻ってこないらしい。


慎一は、チーフになって責任が重くなったってボヤいてる。


朱里は、年下男とつきあい始めて浮かれてる。


洋介とカオリは、去年結婚してもうすぐパパとママになる。



そして、俺は。


「ハッシー、今日ジャージじゃなくてスーツ着ちゃってさ、なんか感じ違くね?」


「俺のこと『ハッシー』って呼んでんのか」


「やべっ」


「こら、俺から逃げられると思うなよ!」


「ハッシー、また来年!」


「気をつけて帰れよ」


今日は金曜日で、終業式。


俺は今年の4月、高校教師に転職した。


葵とのこれからを考えたら、休みがまったく合わない前の会社は諦めるしかなかった。


仕事内容も社内の雰囲気も、なんの問題もなかったけど。


運よく、母校に赴任することができて、慣れ親しんだ校舎で化学の授業とサッカー部のコーチを受け持ってる。


なんで今日は、スーツを着てきたかというと、夜に葵と待ち合わせしてるから。











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