クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
乾杯して、真紅のワインに口づける。
呼吸が芳醇な香りに変わって、開けたままだったカーテンの向こうに広がる夜景を見つめた。
「ここからの景色、私、すごく好きです」
「俺も気に入ってる」
「まさか愛斗さんがこんな素敵な部屋で生活をしているなんて思わなかったから、最初は戸惑いましたけど」
「……疲れて帰ったら、癒しが欲しくなるんだよ。ペットは世話できないし、特別好いてる女もいなかったし。せめて景色くらいは」
打ち合わせは順調だ。
恋愛はかなり難航しているけれど、部長が一緒にいてくれる間に、企画を軌道に乗せられたら……。
「今月中に、自分の家に戻りますね」
「……」
部長は何も言ってくれない。
どんな顔をしているのかも、見れない。
グラスのワインを揺らして、現れる模様だけを見つめるの。
「企画のためですからね。軌道に乗ってさえくれればそれでいいって仰ってましたし……」
「そうだな」
下唇を噛んで、涙をこらえる。
泣くようなことじゃない。失恋をしたわけでもなく、ただ私が勝手に好きになっただけのこと。
この部屋に、思い出がありすぎるからいけないんだもの。