クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ




 今日も懸命に働く彼女を、視界の端で追う。

 誰が言い始めたのか知らないが、俺は高嶺の花らしい。そのせいで周囲の視線は特別集まりやすくなった。



 ――不便だ。


 柏原みたいにフットワークが軽ければいいけれど、任された席と仕事の責任を考えれば、嫌でも慎重になる。

 会社じゃないと会えないのに、仕事以外の会話が増えれば、多少なりとも不自然に映る。

 もっと知りたい……瀬織さんがどんな人なのか、もっともっと見てみたい。



 誰かが彼女に恋をしてしまう前に。

 俺以外の男が、手をつける前に。

 従順そうで、控えめなその姿を乱してみたいと、俺の欲が走ってしまう前に。





「さっき、お願いしたい業務をメールしたんだけど、見てくれた?」


 いいよね?俺から仕掛けても。
 今から連れ出すから、ちゃんとついてきて。





 
「俺と一緒じゃ、そんなに退屈?」

 運転しながら、視界の端で彼女を見つめた。




 俺と、恋をしてみない?

 絶対に知られてはいけない、秘密の社内恋愛。
 ルールを破ってしまうけど、キミを幸せにする自信はある。


 永遠に守ってやるから。



 ――彼女の毎日が、仮面で飾られたものだと知るまで、あと少し。
 


< 347 / 361 >

この作品をシェア

pagetop