【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
宮坂先生が誰を好きになろうと、
誰と結婚しようと私には関係ない話だし。
そう心の中で言い聞かせている。

「……正直、ああいう女オンナしたタイプは、
あんまり好みじゃねぇなあ……」
ぼそり、と彼の言葉が聞こえて、
思わず彼の顔を見てしまう。

頬に走った傷跡、
決してかっこいいとは言えないかもしれないのに、
意志の強そうな瞳や、きりっと引き結ばれた唇とか、
……意外とこの人はモテるのかもしれない。
ふとそんな風に気づいて、改めて先生の顔を見上げる。

私がもう少し大人だったら、
彼のことを、男っぽい色気のある人だ、と
そんな風に思ったのかもしれない。
でも、その時点での私は、そんなことは全然わからなくて、

でも、麻生先生の事を好みじゃないと言った、
彼のその言葉が、何だかうれしくて。

(麻生先生が気に入られてないって聞いて、
それがうれしいって、私、性格が悪いな)

……それからちょっとだけ、
じゃあ、どういう人が好みなんだろう?
……たとえば、私みたいな子は?

と、一瞬考えかけて、思わず顔が熱くなる。
ふと、その瞬間、彼が視線をこちらに流すから、
視線が直接交わって、余計顔が赤くなってしまう。

「……どうした? 顔が赤いぞ?」
そう言いながら、何事もないように私のおでこに手を伸ばす。
余計熱くなる頬に、自分でも動揺しながら、

「夕日のせいですよ、別に体調悪くないですからっ!!」
慌ててそう言うと、彼がふっと笑う。

「そうか? まあ、無理すんなよ……」
そう言って、家の前まで私を送って、そのまま手を振っていこうとするから、
思わず、声を掛けてしまう。

「どうせ、一人で夕食食べるんでしょう?
隼大がもうじき帰ってくるから、
たまには夕食ぐらいごちそうしてあげるわよ!」

必要以上に偉そうにそんな言い方をしているくせに、
思わず顔に熱が上がるのに気づく。

絶対私はおかしい、
頬はすぐ熱くなるし、心臓が苦しくなるのに、

……もう少しだけ彼にいて欲しいって……。

そんな風に思ってしまう自分はきっともっとおかしい……。
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