【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
「桐生さんの周り、爽やかな空気流れてるからねぇ」


爽やかな好青年……。

その言葉に、違和感を抱いた。


「花京院さん、行きましょう」


まるでタイミングを見計らったように現れた桐生さんに、肩が跳ねる。

もうそんな時間……。

近くで話していたふたりも、まさか本人がいるとは思わなかったのか、驚いた様子でいそいそと離れていった。

私も急いで、荷物を持って立ち上がる。


「お待たせしました」

「いいえ。行きましょうか?」


カバンを持って、桐生さんの後ろをついていった。



社内を歩いている途中、女性社員の視線をひしひしと感じた。

みんな桐生さんを見ていて、まだ異動してきてから間もないのに、彼の人気が確立されていることを痛感した。

前を歩く彼の背中を、じっと見つめる。

スタイルもいいし、容姿が整っていることも理解している。けど、どうしてか彼には裏があるようなに思えて仕方がない。
身にまとう空気感というか、言語化できないけれど……社内でささやかれている「爽やかな好青年」というイメージが、私の頭の中のものと一致しない。

少し、不気味ささえ感じてしまっていた。





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