イジワル副社長と秘密のロマンス

冷たささえも愛おしい



「お気をつけてお帰りくださいませ」


エレベーターの扉がゆっくりと閉じていく。

箱の中にいる男性ふたりに向かって、私は深くお辞儀をした。来客のお見送りである。

完全に扉が閉じてから、私は上半身を起こし、小さく息を吐いた。

足早にオフィス内に戻り応接室へと進んでいくと、ちょうどそこから藤城副社長が出てきた。

続けて応接室から社長と会長が出てきた。三人はその場で足を止め、話し込んでいる。

近づいていくと、手元の書類に視線を落としていた副社長が顔を上げる。その瞳が私を捉えた。


「俺、戻ります」


私から視線を外した彼が、社長と会長にそう言ったのが聞こえてきた。

再び彼は私を見て、副社長室の方向を指さした。そのまま彼自身もそちらに向かって歩き出す。

彼の指示に黙って頷き、私はほんの数秒足を止める。

私に気付き笑みを浮かべてくれた会長と、気付いているけど真顔のままの社長に向かって軽く頭を下げてから、私は副社長を追いかけた。

大きな背中に追いついた瞬間、彼が口火を切る。


「来月の中旬くらいに出張入れたいからスケジュールの調整よろしく。あと、今月末までに集めておいてもらいたいデータがあるんだけど……」



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