イジワル副社長と秘密のロマンス

大股で近づいていたじいさんが、俺の背中を遠慮なく叩き、豪快に笑う。

叩かれて痛いからしかめっ面をすれば、また笑う。

この男性は、牧田昴(まきだ すばる)さん。俺の母方の祖母の弟にあたる人。

老人にしては見た目がごついし、髪の毛もごわごわだし、クマみたいに見えるけど、中身はそんなに悪くないと……少なくとも他の大人より幾分マシだと俺は思ってる。

俺の肩に手を回し、車に向かって歩き出した昴さんが、突然足を止め、頬を緩めた。


「おおっ。千花ちゃん、こんにちは!」


気持ち悪いくらいデレデレとした笑い方で、昴さんが力強く手を振り始めた。


「こんにちは!」


声の主を見て、俺は口元を引きつらせた。

道路を挟んで向こう側の歩道に自転車に乗った女の子がいた。しかも俺と同い年ぐらいの。

頬を染めたじいさんが、子供相手にデレデレしながら手を振ってる様が、正直言って、気持ち悪い。すごい気持ち悪い。引く。

キッと、自転車がブレーキ音を奏でた。なんと気なしに視線を戻すと、停止させた自転車に跨ったままの格好のその子と、目が合った。

不思議そうな目で、俺を見てる。誰だアイツはとでも思ってるのだろう。


< 170 / 371 >

この作品をシェア

pagetop