イジワル副社長と秘密のロマンス
大股で近づいていたじいさんが、俺の背中を遠慮なく叩き、豪快に笑う。
叩かれて痛いからしかめっ面をすれば、また笑う。
この男性は、牧田昴(まきだ すばる)さん。俺の母方の祖母の弟にあたる人。
老人にしては見た目がごついし、髪の毛もごわごわだし、クマみたいに見えるけど、中身はそんなに悪くないと……少なくとも他の大人より幾分マシだと俺は思ってる。
俺の肩に手を回し、車に向かって歩き出した昴さんが、突然足を止め、頬を緩めた。
「おおっ。千花ちゃん、こんにちは!」
気持ち悪いくらいデレデレとした笑い方で、昴さんが力強く手を振り始めた。
「こんにちは!」
声の主を見て、俺は口元を引きつらせた。
道路を挟んで向こう側の歩道に自転車に乗った女の子がいた。しかも俺と同い年ぐらいの。
頬を染めたじいさんが、子供相手にデレデレしながら手を振ってる様が、正直言って、気持ち悪い。すごい気持ち悪い。引く。
キッと、自転車がブレーキ音を奏でた。なんと気なしに視線を戻すと、停止させた自転車に跨ったままの格好のその子と、目が合った。
不思議そうな目で、俺を見てる。誰だアイツはとでも思ってるのだろう。